目標13の概要

気候変動は、21世紀最大の脅威の一つです。産業革命以降、人間活動による温室効果ガスの排出により、地球の平均気温は約1.1℃上昇しました。この結果、異常気象の頻発、海面上昇、生態系の変化、食料生産への影響など、様々な問題が顕在化しています。

2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることが合意されました。しかし、現在の各国の削減目標を足し合わせても、今世紀末には約2.7℃上昇すると予測されており、大幅な削減努力の強化が必要です。

1.1℃
既に上昇した気温
1.5℃
目標気温上昇限界
75%
エネルギー由来排出
2030
年46%削減目標

緩和と適応の両輪

気候変動対策には、「緩和」と「適応」の両方が必要です。緩和とは温室効果ガスの排出削減や吸収源の強化であり、再生可能エネルギーへの転換、省エネ、森林保全などが含まれます。一方、適応とは、すでに起こっている、あるいは避けられない気候変動の影響に対処することであり、防災インフラの強化、農作物の品種改良、水資源管理などがあります。

エネルギー転換

化石燃料から再生可能エネルギーへの転換。太陽光、風力、水力、地熱などの普及拡大が急務です。

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産業脱炭素

製造業、運輸業での省エネルギー、電化、水素活用、CCUS技術の導入を推進します。

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森林保全

森林減少の防止、植林、森林管理の改善により、CO2吸収源を強化します。

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適応策

防災インフラ、早期警報システム、気候耐性作物の開発により、気候変動の影響に対処します。

気候変動の影響例

気温上昇:熱波の頻発、農作物の品質低下、熱中症リスク増加

降水量変化:洪水と干ばつの激化、水資源の不安定化

海面上昇:沿岸地域の浸水、島嶼国の水没リスク

生態系変化:生物種の絶滅加速、生態系サービスの劣化

カーボンニュートラルへの道

日本は、2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を宣言し、2030年度に2013年度比46%削減という目標を掲げています。この実現には、エネルギー、産業、運輸、建築など、社会のあらゆる分野での脱炭素化が必要です。

分野別脱炭素化戦略

  • 電力部門:再生可能エネルギー比率を2030年36-38%へ拡大
  • 産業部門:省エネ、燃料転換、革新技術の導入
  • 運輸部門:電気自動車、水素自動車の普及拡大
  • 家庭・業務部門:ZEH/ZEB、省エネ機器の普及
  • 革新技術:水素、CCUS、次世代太陽電池等
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蓄電技術

再生可能エネルギーの変動性を補うため、大容量蓄電池やパワーツーガス技術を開発。

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水素社会

クリーン水素の製造・利用拡大により、産業、運輸、発電分野の脱炭素化を推進。

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CCUS技術

CO2回収・利用・貯留技術により、避けられない排出をオフセット。

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国際協力

技術移転、資金支援、能力構築により、世界全体の脱炭素化に貢献。

気候資金とグリーンファイナンス

気候変動対策には膨大な投資が必要です。先進国は途上国への年間1,000億ドルの気候資金提供を約束していますが、実際の需要はその数倍に上ります。民間資金の動員が不可欠であり、グリーンファイナンス市場の拡大が期待されています。

グリーンファイナンスの拡大

1000億
ドル気候資金約束
4兆
ドル年間投資需要
100兆
円グリーン市場規模
2050
年ネットゼロ目標

金融セクターの役割

  • グリーンボンドの発行拡大
  • ESG投資の主流化
  • 気候リスク開示の義務化
  • 化石燃料事業からのダイベストメント
  • トランジション・ファイナンスの推進

気候正義と公正な移行

気候変動は、貧困国や脆弱な立場の人々に最も深刻な影響を与えます。温室効果ガスをほとんど排出してこなかった国々が、干ばつや洪水、海面上昇により最大の被害を受けるという「気候不正義」の問題があります。先進国は、途上国への資金支援(年間1,000億ドル)と技術移転を通じて、この不均衡に対処する責任があります。

脆弱な人々への影響

小島嶼開発途上国:海面上昇により存続の危機

アフリカ・サヘル地域:干ばつと砂漠化の深刻化

沿岸地域住民:高潮・台風被害の頻発

農業従事者:収穫量減少と生計への打撃

公正な移行(Just Transition)

脱炭素化の過程で、化石燃料産業で働く労働者や、炭素集約的産業に依存する地域社会に配慮した移行が重要です:

  • 労働者の再教育・スキルアップ支援
  • 新たな雇用創出(グリーンジョブ)
  • 影響を受ける地域への投資
  • 社会保障制度の整備

日本の取り組み

日本は2050年カーボンニュートラルを宣言し、グリーン成長戦略を策定しています。また、国際的にはアジア・ゼロエミッション共同体構想を提唱し、アジア地域の脱炭素化を支援しています。

国内施策

📋

地球温暖化対策計画

2030年度46%削減目標の達成に向けた部門別・分野別の対策を策定。

💰

GX経済移行債

20兆円規模の投資により、クリーンエネルギー戦略の実現を支援。

🏢

カーボンプライシング

炭素国境調整措置の検討、排出量取引制度の拡充を推進。

🔬

イノベーション推進

ムーンショット型研究開発、グリーンイノベーション基金の活用。

国際協力

  • アジア・ゼロエミッション共同体の推進
  • 途上国への気候資金支援(年間130億ドル)
  • 二国間クレジット制度(JCM)の展開
  • 技術移転・能力構築支援
  • 気候変動適応技術の普及