目標1の概要
極度の貧困とは、1日1.90ドル未満で生活している状態を指します。2015年時点で世界人口の約10%、7億人以上がこの状態にありましたが、2030年までにこれをゼロにすることを目指しています。
貧困は単に収入が少ないという経済的な問題だけではありません。教育や医療へのアクセスの欠如、安全な住居や清潔な水の不足、社会的排除、意思決定からの疎外など、多次元的な剥奪状態を意味します。このため、SDGsでは「あらゆる形態の貧困」の撲滅を掲げています。
多次元的貧困とは
経済的側面:収入・資産の不足、雇用機会の欠如
社会的側面:教育・医療へのアクセス不足、社会保障からの除外
政治的側面:意思決定プロセスからの排除、権利の侵害
環境的側面:安全な水・衛生設備の不足、住環境の悪化
基本的サービスへのアクセス
また、基本的なサービス(教育、医療、水、衛生、電気など)へのアクセスを保障することも不可欠です。途上国の農村部では、これらのサービスが欠如していることが多く、貧困の連鎖を生んでいます。
基本的サービスの重要性
基本的サービスへのアクセス確保は、貧困削減の根幹となります:
医療サービス
病気による経済的破綻を防ぎ、健康な労働力を維持することで貧困から脱却する基盤となります。
教育サービス
知識とスキルの習得により、より良い雇用機会を得て、収入向上と貧困脱却を実現できます。
水・衛生
清潔な水と衛生設備により、水因性疾患を防ぎ、医療費負担を軽減し、生産性を向上させます。
エネルギー
電力アクセスにより、夜間の学習、冷蔵保存、通信が可能となり、経済活動の幅が広がります。
貧困削減の課題と対策
構造的要因への対処
貧困は単なる個人の問題ではなく、構造的な要因が深く関わっています。不平等な所得分配、雇用機会の不足、質の低い教育システム、脆弱な保健制度、社会的差別などが、貧困の根本原因となっています。
気候変動と貧困
気候変動は貧困層に最も深刻な影響を与えます。干ばつや洪水などの自然災害により、農業収入が減少し、住居を失い、さらに貧困が深刻化する悪循環が生まれています。気候変動に強い農業技術の普及や、災害リスク軽減策の実施が必要です。
貧困削減のための包括的アプローチ
短期的対策:緊急援助、現金給付、食料支援
中期的対策:職業訓練、小規模融資、社会保障制度構築
長期的対策:教育制度改革、経済構造改革、制度・ガバナンス改善
日本の取り組み
日本は国内外で貧困削減に取り組んでいます。国内では相対的貧困率の削減、子どもの貧困対策、生活保護制度の充実などを進めています。国際的には、ODA(政府開発援助)を通じて途上国の貧困削減を支援し、「人間の安全保障」の理念の下、個人の尊厳と能力強化に焦点を当てた協力を展開しています。
国内の貧困対策
- 相対的貧困率の削減(現在約15%)
- 子どもの貧困対策推進法の施行
- ひとり親世帯への支援強化
- 生活困窮者自立支援制度の運用
国際協力
- ODAによる途上国支援(年間約150億ドル)
- 人間の安全保障基金による多国間協力
- 技術協力による能力構築支援
- 民間セクターとの連携強化
社会保障制度の整備
具体的な取り組みとしては、社会保障制度の整備が重要です。失業保険、年金、児童手当、障害者支援など、セーフティネットを構築することで、人々が危機に直面したときに貧困に陥らないようにします。日本では国民皆保険・皆年金が確立していますが、世界では人口の半分以上が社会保障の恩恵を受けていません。
社会保障の種類と効果
社会保障制度には、以下のような様々な形態があります: