目標2の概要
世界では約8億人が慢性的な飢餓状態にあり、さらに20億人以上が「隠れた飢餓」と呼ばれる栄養不良に苦しんでいます。栄養不足は子どもの発育阻害や免疫力の低下を招き、貧困の世代間連鎖の大きな要因となっています。
飢餓の主な原因は、食料不足だけではありません。実は世界全体では、全人類を養うのに十分な食料が生産されています。問題は、紛争、気候変動、経済危機、不平等な分配などによって、必要な人々に食料が届かないことにあります。
飢餓と栄養不良の種類
急性飢餓:一時的な食料不足による深刻な栄養失調状態
慢性飢餓:長期間にわたる継続的な栄養不足
隠れた飢餓:カロリーは足りているが、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が不足
栄養過多:過剰栄養による肥満や生活習慣病
持続可能な農業の促進
持続可能な農業の促進は、この目標達成の鍵です。小規模農家の生産性向上、灌漑設備の整備、気候変動に強い作物の開発、農業技術の伝達などが重要です。世界の食料の約80%は小規模農家によって生産されていますが、彼ら自身がしばしば貧困と飢餓に苦しんでいるという皮肉な状況があります。
生産性向上
改良種子、肥料、農業技術の普及により、小規模農家の生産性を2倍に向上させる取り組みが進んでいます。
灌漑設備
効率的な水利用システムと干ばつに強い農業技術により、気候変動に対応した農業を実現します。
品種改良
気候変動に適応し、栄養価が高く、病害虫に強い作物品種の開発と普及を推進しています。
技術普及
農業技術の研修と普及により、農家の知識とスキルを向上させ、持続可能な農業を促進します。
アグロエコロジーの推進
持続可能な農業のアプローチとして、アグロエコロジー(生態学的農業)が注目されています。このアプローチは、生物多様性を活かし、化学肥料や農薬の使用を減らしながら、土壌の健康を保ち、長期的な生産性を維持します。
食料システムの改革
また、食料システム全体の見直しも必要です。生産、加工、輸送、消費、廃棄に至る一連のプロセスで、大量の食料が失われています(食品ロス・食品廃棄)。世界で生産される食料の約3分の1が廃棄されており、これは年間約13億トンに上ります。
食品ロス・廃棄の現状
食品ロスと廃棄は、フードチェーンの各段階で発生しています:
- 生産段階:収穫前の損失、規格外品の廃棄
- 加工・流通段階:技術不足、インフラ不備による損失
- 小売段階:賞味期限切れ、見た目による廃棄
- 消費段階:家庭での食べ残し、過剰購入
食品ロス削減の経済・環境効果
経済効果:年間約1兆ドルの経済損失を防ぐ
環境効果:温室効果ガス排出を年間44億トン削減
社会効果:削減分で約30億人の栄養改善が可能
フードシステムの変革
持続可能で公平なフードシステムの構築には、以下の要素が重要です:
- 地域の食料システムの強化
- 短いサプライチェーンの構築
- 循環型農業の推進
- 食品安全性の向上
- 栄養教育の普及
気候変動と栄養
気候変動は食料生産に深刻な影響を与えています。干ばつ、洪水、異常気象の頻発により、農作物の収量が減少し、食料価格が上昇しています。また、CO2濃度の上昇により、米や小麦などの主要作物の栄養価が低下することも明らかになっています。
気候変動の影響
気温上昇
高温による作物の成長阻害、収量減少、品質低下が世界各地で報告されています。
水資源
降水パターンの変化により、干ばつと洪水が増加し、農業用水の確保が困難になっています。
病害虫
気候変動により病害虫の分布域が拡大し、農作物被害が増加しています。
栄養価低下
CO2濃度上昇により、穀物のタンパク質、鉄分、亜鉛などの栄養素が減少しています。
日本の取り組み
日本は食料自給率の向上、食品ロス削減、農業技術の海外展開などに取り組んでいます。国内では食料自給率が約38%(カロリーベース)と低く、食料安全保障の強化が課題となっています。また、年間約600万トンの食品ロスが発生しており、その削減に向けた取り組みが進められています。
国内の取り組み
- 食料自給率向上に向けた農業振興
- 食品ロス削減推進法の施行
- スマート農業の推進
- 学校給食での食育推進
- フードバンク活動の支援
国際協力
- アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)
- 農業技術の国際展開
- 世界食料計画(WFP)への支援
- 栄養改善事業の推進
- 気候変動適応技術の普及
日本の農業技術の国際貢献
日本は高い農業技術を活かし、アジア・アフリカ地域での食料増産に貢献しています。特に、水田技術、品種改良、農業機械化の分野で大きな成果を上げています。